コロナ重症化、関連遺伝子を特定 新治療法の確立に期待

新型コロナウイルス感染症の重症化につながる遺伝的変異を特定したとする論文が11日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。患者の救命に役立つ既存薬の特定や新薬の開発を大きく前進させる可能性のある研究結果だ。

英エディンバラ大学(University of Edinburgh)の遺伝学者ケネス・ベイリー(Kenneth Baillie)氏が率いる研究チームは、一部の感染者が重症の肺炎症を起こす原因を特定するため、英国の重症患者2000人超のゲノム変異を解析し、その多くが持つ配列を8つ特定。さらなるコンピューター解析で、炎症性タンパク質の遺伝子である「TYK2」と「CCR2」に的を絞り込んだ。

論文の筆頭著者で英エディンバラ大学(University of Edinburgh)の遺伝学者のケネス・ベイリー(Kenneth Baillie)氏は、TYK2の活性化を抑える医薬品はすでに複数存在していると説明。これらはJAK阻害薬として知られ、がんや関節リウマチなどの慢性疾患の治療薬として処方されることが多い。

研究チームはさらに、免疫反応に関与するCCR2タンパク質を阻害する抗体治療も現在、臨床試験(治験)が進められていると指摘。新型ウイルス感染症の重症患者に対するこれらの治療方法の有効性を調べる治験を緊急に実施すべきだとしている。

[TYK2]
生体における慢性化した炎症反応ががん・自己免疫疾患・生活習慣病を含むさまざまな疾患発症と密接な関連をもつことが近年注目されており炎症反応制御の根底にある分子機構の理解は重要です。わたしたちは炎症反応におけるTyrosine kinase 2 (TYK2)の役割に着目しています。TYK2はJAKファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼであり、IL-12、IL-23、IFN-alpha等のサイトカイン受容体に会合し、それら受容体下流の細胞内シグナル伝達活性化を仲介する役割をもちます。これによりヘルパーT細胞分画の分化の方向付けや、ナチュラルキラー細胞からのIFN-gamma産生などに役割をもつことが現在までに判明しており、ウイルスや細菌など外来抗原に対する防御応答において重要なタンパクであることが明らかとされてきました。

TYK2がシグナル伝達に関わるサイトカインとして,IL-6,IL-12,IL-10,IL-13,IFN-α/βなどが多くのサイトカインが挙げられますが、遺伝子欠損マウスが致死的な表現型を示すJAK1やJAK2,あるいは免疫不全の表現型を示すJAK3に比べて,TYK2欠損マウスは出生および成長に明らかな異状は認められず、IL-12シグナルやIFNシグナルの部分的な抑制が初期に同定された表現型でした。しかしながら2006年に、皮膚・肺における反復性感染症、アトピー性皮膚炎、血清IgEの高値を3主徴とする高IgE症候群患者において、ヒトTYK2欠損が原因とされる一例が発見・報告されました。TYK2が関わるサイトカインシグナル伝達の異常によりヒトの免疫不全症を発症することから、ヒトにおけるTYK2がマウスにおいてよりも免疫系へ大きな寄与をもつと考えられるようになりました。

また近年ヒト疾患の原因遺伝子同定を志向したゲノムワイド関連解析の結果が多数報告されている中、TYK2のアミノ酸置換を伴う一塩基多型 (SNP)が、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、1型糖尿病の疾患感受性に影響することも報告され、ヒトTYK2遺伝子のSNPが持続的炎症を伴う自己免疫疾患の発症頻度と関連することが示唆されています。

[CCR2]

ケモカインとその受容体は、正常な免疫機能および炎症性疾患において白血球の輸送を協奏的に引き起こす。多様なケモカインが同じ受容体で異なる応答を誘発することができる。単球走化性タンパク質-1(MCP-1、別名CCL2)と異なり、ケモカインMCP-2(CCL8)およびMCP-3(CCL7)はその共通受容体CCR2の部分アゴニストである。CCR2は、アテローム性動脈硬化症、肥満および2型糖尿病の病理に寄与する、単球およびマクロファージの遊走の主要調節因子である。MCP-1とMCP-3のキメラを用いた実験を通じて、われわれは、これら2種類のケモカインのCCR2との結合およびシグナル伝達の選択性の両方の一次決定因子として、ケモカインのアミノ末端領域を同定した。CCR2変異体の解析から、ケモカインのアミノ末端は、CCR2の膜貫通型ヘリックス束内の主要なサブポケットと相互作用し、これは、その受容体のマイナーなサブポケットと他の一部のケモカインとの相互作用とは異なることが示された。これらの結果は、主要なサブポケットがCCR2の低分子阻害因子開発の標的であることを示唆している。