英オックスフォード大のワクチン、治験で「期待持てる」結果

イギリスのオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験で、免疫反応を誘発する効果と安全性が確認されたことが明らかになった。この内容は英医学誌ランセットに20日に掲載された。

1077人を対象に実施された臨床試験でワクチンを投与したところ、新型コロナウイルスと戦う抗体とT細胞が生成されることが示された。

この発見は非常に期待が持てるものだ。しかし、体を守るのに十分な効果かどうかを判断するには時期尚早で、さらに大規模な臨床試験が進められている。

イギリス政府はすでに1億人分のワクチンを発注している。

■ワクチンはどうやって効くのか

「ChAdOx1 nCoV-19」と呼ばれるワクチンは、前例のないスピードで開発されている。

このワクチンは、チンパンジーからとった一般的な風邪のウイルス(アデノウイルスと呼ばれる)を弱めたものからつくられたもので、人間に感染しないように変えられている。また、新型ウイルスにより「似せて」つくられている。

科学者たちは新型ウイルスの表面にみられるスパイクタンパク質(私たちの細胞に侵入するために重要な部分)への遺伝的指令を、開発中のワクチンにコピーすることでこれを実現した。

つまり、このワクチンは新型ウイルスに似たものとなり、免疫システムが新型ウイルスを攻撃する方法を学べるということだ。

■抗体とT細胞とは

これまでのところ、新型コロナウイルス問題で注目されてきたのは抗体ばかりだった。しかし、これらは私たちの免疫防御の一部にすぎない。

抗体は免疫システムによってつくられた小さなタンパク質で、ウイルスの表面に付着する。

中和抗体は新型ウイルスを無力化できる。

白血球の一種であるT細胞は免疫システムの調整を助け、体内のどの細胞が感染しているかを見つけ出して破壊する。

ほぼ全ての効果的なワクチンは、抗体とT細胞の両方の反応を誘発するものになっている。

T細胞の活動レベルはワクチン接種から14日後にピークに達し、抗体は28日後にピークに達した。この研究は、これらがどれくらい続くのかを理解するのに十分な期間は行われていない。

オックスフォード研究グループのアンドリュー・ポラード教授は、BBCに対し、「我々は本日発表された、中和抗体とT細胞の両方の結果に大変喜んでいる」と述べた。

「非常に期待が持てる結果であり、この種の反応が人間を守ることに関係しているかもしれないと考えている」

「しかし、みんなが知りたがっている重要な疑問は、このワクチンが効くのか、そして防御効果をもたらすのかということだ。(中略)これは持久戦だ」

この研究では、参加者の90%が1回のワクチン投与で中和抗体を生成することが示された。2回投与されたのは10人だけで、全員が中和抗体を生成した。

「防御効果を得るためにどれくらいの反応が必要なのかはわからないが、2回目の投与で反応を最大化できる」と、ポラード教授はBBCに述べた。

■安全なのか

安全だが、副作用がある。

ワクチンの接種で危険な副作用は起こらなかった。しかし、参加者の70%に、発熱か頭痛のいずれかの症状がみられた。

研究者たちは、解熱鎮痛薬のパラセタモールで対処できる可能性があるとしている。

オックスフォード大学のサラ・ギルバート教授は、「我々のワクチンがCOVID-19(新型ウイルスによる感染症)のパンデミックを制御するのに役立つかを確認するには、まだ多くの作業が必要だ。しかし初期段階の結果には期待が持てる」と話す。

■次のステップは

これまでの結果は期待が持てる内容だったが、臨床試験の主な目的は、ワクチンが人間に投与しても十分安全だと確認することだ。

この研究では、今回のワクチンが人々の病気を防げるのか、あるいはCOVID-19の症状を軽減できるのかは示せていない。

イギリスでは臨床試験の次の段階に1万人以上が参加する予定だ。

しかしイギリスでは新型ウイルスの規模が小さく、ワクチンの効果を確認するのが難しいことから、臨床試験はほかの国々にも拡大している。

アメリカでは3万人を対象とした大規模な臨床試験が予定されている。また、南アフリカでは2000人が、ブラジルでは5000人が参加することになっている。

ワクチンを接種した人が新型ウイルスに意図的に感染する「挑戦的な臨床試験」を行うことを呼びかける声もある。しかし治療法が確立されていないため、倫理的な懸念がある。

■ワクチン接種はいつになるのか

年内にワクチンの効果が証明される可能性はあるが、広く普及はしないだろう。

医療従事者や介護従事者、年齢や健康状態からCOVID-19を発症するリスクが高いとみなされる人が優先的に接種を受けることになる。

全てが計画通りに進んだとしても、広範なワクチン接種の実現は早くても来年になる可能性が高い。

ボリス・ジョンソン英首相は、「言うまでもなく、私は希望に満ちている。ずっと祈ってきた。しかし私が今年中あるいは来年にワクチンが手に入ると100%確信を持って言えるかというと、残念ながら言い過ぎになってしまう」と述べた。

「我々はまだその段階にはいない」

■ほかのワクチンの進捗は

ワクチン開発でこの段階に到達したのは、オックスフォード大学のワクチンが初めてではない。アメリカや中国の研究チームも同様の結果を発表している。

アメリカのモダーナ社が最初に、ワクチンで中和抗体を生成した。モダーナ社は新型ウイルスのRNA(遺伝子コード)を被験者に投与し、免疫反応を引き起こすためのウイルス性タンパク質が生成された。

独ビオンテックと米製薬大手ファイザーもRNAワクチンで良い結果を得ている。

中国で開発されたオックスフォード大学のものに似た技術も期待できそうだ。

しかしこれらのアプローチはいずれも科学の絶対的な境界線上にあり、これまでに効果は証明されていない。

ワクチン開発のより伝統的な方法についても研究が進められている。仏ヴァルネヴァは新型ウイルスを丸ごと採取して不活化してから投与している。

世界中で合わせて23のワクチンの臨床試験が行われており、ほかに140のワクチンが開発の初期段階にある。

■イギリスはワクチンを獲得するのか

英政府は1億9000万人分の様々なワクチン提供を受ける契約を締結している。

その内訳は次の通り――。

・遺伝子操作されたウイルスからつくられたオックスフォード大学のワクチン1億回分
・新型ウイルスの遺伝子コードの一部を投与するビオンテック/ファイザーのワクチン3000万人分
・新型ウイルスを不活化したヴァルネヴァのワクチン6000万人分

イギリスの約6600万人の国民に免疫を与えるられるのか、その有効性が不確実であるにも関わらず、イギリスはこれらのワクチン確保に資金を投入している。

イギリスのワクチン・タスクフォースのケイト・ビンガム氏はBBCに対し、「我々は異なるカテゴリーあるいは異なる種類のワクチンの中から最も期待できるワクチンを見つけ出そうとしている。そのいずれかのワクチンが安全で有効だと証明された場合に、確実に入手できるようにするために」と述べた。